671365 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

イタリアいなかまち暮らし

イタリアいなかまち暮らし

◆好み【大人の味】

◆南イタリア人の味覚【大人の味】

●苦いもの好き
イタリアでは苦いものが結構食べられる。代表がチコーリア。(ややこしいのだが日本語、英語ではチコリーと言うと別の野菜も指すので、ここではイタリア語のチコーリアcicoriaと呼ばせてもらう。)濃い緑色で春菊みたいな見かけだけどすごく苦い野菜で、オリーブ油で炒めて食べる。
イタリア語でインディヴィアindiviaと呼ばれる野菜も苦い。これが英語でチコリーと呼ばれ、白い大きな芯のような野菜で、これは生野菜としてサラダに入れて食べる。

あと、イタリア語では同じくindiviaと呼ばれるもじゃもじゃしたうす緑の野菜、エンダイブや、イタリア語でラディッキョと呼ばれる赤い葉っぱ(これは英語ではまたもやチコリー。ああややこしい!)なども、苦いのにミックスサラダには必ず入っている。それでなくても普通にサラダに使われるレタスも微妙にほろ苦い。フランスに行ったときは甘いサニーレタスが主流で、サラダが苦いと思わなかったが、イタリアのレストラン、夫の実家で食べるサラダは必ずこれが入っていて苦い。我慢できないほどではないけど。ちなみに苦くないレタスも売っているので、それで自分でサラダを作ると苦くない。

↑チコーリア


↑インディヴィア(チコリー)


↑エンダイブ


↑ラディッキョ

注:ここで紹介した野菜の名称は一般的なイタリア語で、ということで、リンク元で書かれている名称のように、正確な呼び方がそれぞれありますし、地方によって、また人によっても呼び方は違うようです。ウィキペディアも見ましたが英語でもこれらの野菜の名称には混乱がある模様。夫が普通に読んでいる名称を書きましたが、あくまで数多い名称の中のひとつ、ということであしからず。


また、イタリアの男性はよく食後に苦いリキュール類を飲む。苦いのはいろんな薬草が入っているから。薬草が消化を助けるので食後なのだ。種類はいろいろあって、まとめて「アマーロ(苦い)」と呼ばれる。

言わずもがなだがイタリアのコーヒーは濃くて苦い。しかしこれは普通、砂糖を沢山入れて和らげて飲む。

●酸っぱいもの好き

イタリアの食べ物は酸っぱいものが多い。

夫の実家でサラダが出るときは必ず大きなボウルに入って酢とオリーブ油がかかってくるが、最初、かかってる量が半端じゃなかった。すごく酸っぱくって油が多かった。底に何センチも沈んでいるほどだ。

この酢というのは日本の米酢を想像してはいけない。それよりもっともっときついワインビネガーだ。ワインビネガーでも赤のワインビネガー。しかも市販のよりさらに匂いがきつい自家製赤ワインビネガーである。これは匂いをかぐと酢とワインのきついにおいがつーんとしてかすかにシンナーのようなにおいも混じってくらくらする。自家製で発酵させるとこういうものらしい。とくに田舎スタイルはこういうワイルドな酢を好むものらしいが、最近では酢の嗜好はマイルド化されて、りんご酢が人気らしい。
ちなみに酢の強さ比べ、自分の実感ではこういう順番で強くなってゆく
日本の米酢 → イタリアのりんご酢 → 中国の米酢 → 白ワインビネガー → 赤ワインビネガー

それでこれはさすがに食えんと思って、次から頼んで私のだけ別皿で、特に酢を控えめにしてもらっていた。しかしまたそのうちに親たちの嗜好が変わったのか、酢と油が少なくなってきたので今は一緒のボウルから食べている。

ピクルス類もむちゃくちゃ酸っぱい。オイル漬けもたいてい保存性を高めるためにまず酢に漬けてからオイルに浸けるため、酸っぱい。また、レストランでなすとズッキーニのグリルを頼むと、多くの場合酢とオリーブ油が最初からかかって出てくる。これも非常に酸っぱい。

トマトソースも酸っぱいものだ。普通のシンプルなトマトソーススパゲッティは本場イタリアで食べると酸っぱいと感じる日本の観光客がいるようだ。日本のイタリアンレストランでは砂糖を加えているのだろう。ちなみにイタリアでも秘密だが厨房では砂糖は少々入れる。使うトマト缶にも違いがあって、安いものほど酸っぱいので、そういう場合は砂糖を足すのだ。それでも日本の味に慣れているとまだ酸っぱいのだろう。私は慣れてしまってトマトソースと言うのは酸っぱいものとして食べている。一度日本で家族に本場のトマトソーススパゲッティを作って食べさせたことがあったが、「酸っぱい」と非難ごうごうだった。

レモンシャーベットも、甘みはひたすら控えめで、レモンの酸味が強調されるものがいいとされる。私は酸っぱすぎて完食できなかった。普通のジェラート屋のレモンジェラートもけっこう酸っぱい。

果物も、イチゴ、桃、ビワ、ミカンは日本と比べてすごく酸っぱい。品種改良が日本ほど熱心にされていないのもあるが、このすっぱさを楽しむ人もいる。

パンも、パンの項(こちら)で書いたが、ほのかに酸っぱい。

うれしいものもある。炭酸オレンジ飲料、炭酸レモン飲料は日本のものより果汁の味が濃くて、甘さ控えめで酸味が強い。甘いジュースが嫌いな人も楽しめると思う。

日本ではハインツのケチャップが甘みの少ないトマトの濃いケチャップとして定評があるが、イタリアの普通のスーパーに売っているケチャップは全部そう言う感じだから、わざわざハインツを買う必要はない(あまり見かけないし)。ちなみに甘いタイプも外国資本のディスカウントショップで手に入る(MDとか、LIDLというチェーン店)。

ワインも、辛いものが好まれる。ここでまたドライというキーワードが出るのだが、ビールでドライというように、ワインでも甘みのないという意味で使われる。イタリア人は、特に赤ワインの辛くて渋くて酸っぱいのが大好きで、魚介でも気にせず赤を飲む人もいる。

ここまで酸っぱいものが多い理由は、やはりイタリア料理はオリーブ油をよく使う料理だからだろう。一人前のパスタに少なくとも大さじ4杯以上は入っている。もちろんパスタだけではなく、すべての料理にふんだんに使われる。油は酸味ととても相性がいい。脂っこさをさっぱりさせるために酸味で中和させると言うわけだ。

●その他、クセのある食べ物(というか私の嫌いなイタリア食)

世界中で受け入れられ、ピザにパスタと、ファーストフード的な扱いを受け、一見全然クセのさそうなイタリア料理だが、イタリア人も結構クセのあるものを食べる。
フェンネル(ウイキョウ)finocchio。中華料理に使う八角(スターアニス)の風味だ。春・夏の食後に必ず生で食卓に出てくる。この生野菜は薄緑をしていて丸く、肉厚の芯のような葉のようなものが幾重にも丸く重なっている。その芯をはがしてはぽりぽりと食べる。味付けは何もいらない。ほのかに自然の甘みがあって、八角の匂いがぷんぷんするのだ。私は生は苦手だが料理したものは結構好きだ。たぶん、中華料理にさえ八角を入れない一般的な日本の味に慣れた人たちは、ちょっと戸惑う味だと思う。
しかしイタリア人はほんとにこれが好きでぽりぽりといつまでも食べている。食後に口をさっぱりさせる感じも、ウケる原因らしい。

英フェンネル 和ウイキョウ 伊フィノッキョ

リコリス(甘草)。何の味といったらいいのか、これも強烈なクセがある薬草の一種。欧米に住んだことのある人なら知っているかもしれないが、真っ黒な菓子がある。他の色つきの菓子と混ざっている場合もあれば、黒いのだけ売られているのもあるし、飴だったり、グミだったりと形状も変わるが、黒いのは必ずこのリコリスの味がついている。12歳のときイギリスで好奇心から食べて見たことがあるが・・・のたうって後悔した。漢方薬の胃薬の味に近い。それからは手をつけていない。イギリスで売っていたと言うことはイタリア人だけではないが、子供のときからこんなクセのあるものを食べれるって、ある意味、偉いと思う。
棒がリコリスになっているアイスキャンディもある。
リコリスはもちろん食後酒にもよく使われる。

チーズにもクセのあるものが多い。チーズは一般的に同じ種類でも味がマイルドなものと強いものがあり、マイルドはドルチェ(甘い)、強いのはピッカンテ(辛い)と表示される。
羊のチーズは人気が高く種類も多い。強いものは強烈だ。羊の匂いそのものが口の中に広がる。蝋のような味がするときもある。マイルドなのも含め、私は食べられない。成長した羊肉は嫌われて臭みのない子羊が好まれるのに、なせチーズは羊くさいのが好まれるのだろう。

ゴルゴンゾーラ。納豆の匂いがするブルーチーズだ。これはドルチェ(マイルド)なら初めての人も結構食べられる。そして多分このためにイタリア人は納豆は平気だと思う(糸引きがなければもっと)。
クセのあるチーズ(ハードタイプのチーズ)が多いのはやはり北で、南では結構癖がなくて牛乳の味の濃いモツァレラやリコッタなどの無発酵チーズがよく食べられる。

多くのイタリア人はソラマメを生で食べる。渋くて青臭いがみずみずしい味がする。多分この青臭さがダメな人も多いだろう。私は2,3個までなら平気だけど、それより多く食べると口の中じゅう渋々になるから苦手だ。
生のアーモンドも食べる。殻ごと売られているので殻を割りながら食べる。これも青臭くて渋い。

好き嫌いはイタリア人でも分かれるが、生の貝やえびがイタリアでは食べられる。よく食べられるのは牡蠣、ファソラーロと呼ばれる身のふちが赤いハマグリ、スカンピなど。主に祝い事のように豪華な食事を演出したいときに前菜として用いられる。でなくとも魚が大好きな人は普通のときでも食べる。特にプーリア州沿海の人たちは普段も好んで食べていて、上記のほかにマテ貝、アサリ、ムール貝、イカ、ウニも生で食べる。貝などは殻を開かれて塩水でさっと洗われただけで出てくるのを、レモンを絞って食べる。
この生の貝だが、レモンを絞ってもものすごく魚臭い。瀬戸内海の魚は味が濃いと日本でも言われるように、地中海も内海なので味が濃いが、同時に磯臭さが強い。しかも二枚貝をそのまま食べるのはものすごく臭い。魚介の生食代表人種であるはずの我々だが、実は結構デリケートな魚をデリケートな方法で食べているのだ。このワイルドなイタリアの食べ方は刺身とはわけが違う。
特にマテ貝はもう匂いだけでくらくらするが、食べるとその後何を食べても磯臭さが口に残る。これはダメな人も多いと思う。また、磯の風味と見事にマッチして臭みを中和する醤油とワサビという利器がないのも大きい。
私はもともと刺身は得意ではないし、好きなイカとかエビの刺身でも結構しょうゆたっぷり目に賭けて食べる人なので、イタリアのこれは全くダメ。

クッキー、ケーキ、コルネット(クロワッサン)には必ずといっていいほどレモンピール(皮)かオレンジピールで味付けがしてある。(ビールじゃないですよ。PEEL)私はもともとは好きなほうだったけど、もう食傷気味だ。なんせ・・・スーパーでなんとなくおいしそうだなと思って買った見かけ普通のクッキー→ピール味。クリスマスに食べるカステラみたいな見かけの義母の手作りの伝統菓子→ピール味。朝、バールに入って手に取ったコルネット→ピール味。イタリア製マドレーヌ→ピール味・・・。たまに入ってないものもあるけど、まず入ってるなと覚悟して買わなければならない。これらは見かけが日本のものと同じなだけについ日本の菓子のプレーンなバター味を期待して食べてしまい、思い切り裏切られるからだ。


締めくくり * * * * * *

批判っぽく書いてはいるが、書いていて気がついたことはなんだかんだいってイタリア人って自覚せず舌が鍛えられているんじゃないかってこと。味付けは控えめに素材をそのまま食べるってことも大切だし、子供のときから「甘い・辛い・酸っぱい・苦い」を全てバランスよくちゃんと味わって初めてまともな味覚が育つと言われる。だからもしかして「食育」の観点からはイタリア人(特に南、田舎)の食生活って、理想的なのかも、と思った。チーズと肉と油(オリーブ油だけど)が多すぎるのが難点だけどね。

次へ


© Rakuten Group, Inc.